CMS(コンテンツマネジメントシステム)とは、Webコンテンツの構成要素を保存・管理し、サイトの構築や編集など必要な処理を行うソフトウェアのことです。
導入によりHTMLなどの知識を習得していない人でもWebサイトの管理ができるようになります。一言にCMSと言っても、ライセンス費用が無料のものから数百万円もするものもあれば、単一用途から高度な機能を備えるものまで数多く存在しています。
Webサイトを新規構築・リニューアルする際にどう選択すればいいのか、そしてCMSを使ってどんなことができるのかなどについて、簡単にご紹介します。
コンテンツ管理の重要性
インターネット環境の発達やスマートデバイスの普及などにより、人々のライフスタイル、Webサイトの閲覧行動、更に購買などの意思決定プロセスも変化し続けています。消費者は受動的に情報を受け入れる時代から、自らWebサイトなど多様な手段を使い、必要な情報を能動的に収集して判断する、いわゆる消費者主動の時代がやってきています。検索エンジンもそれに伴いコンテンツの中身、情報の有益性を重視するようになっています。昔のような被リンクなどの操作でコンテンツの内容を変えないまま、検索結果の上位に表示させる行為が、アルゴリズムの変更によって効果がなくなるか、ペナルティーを受けることにもなりかねません。
そんな中、最近Web業界で多く言及されるのが、「Content is King(コンテンツは王様である)」というフレーズです。これは1996年頃、当時マイクロソフト社のトップであるビル・ゲイツ氏が文章のタイトルに使われたことで広まってきたものです。また、共に注目されるようになったのは「コンテンツマーケティング」というマーケティング手法です。質の高いコンテンツは、SEO対策としても有効であり、顧客育成にも力を発揮します。いかに有益な情報を適切なタイミングで提供し続けることが、企業のブランディング、ひいてはビジネス成功に繋がる重要な戦略となります。
ただし、いくらコンテンツの内容が充実していても、文章構造がバラバラで検索エンジンに認識されなかったり、閲覧環境を配慮しないためユーザーに不便をかけたり、社内運用が時間と予算を掛かりすぎて負担となったりするようなことがあれば、コンテンツの効果は薄れてしまう恐れがあります。このような背景の下、コンテンツを管理するCMSを導入するサイトが多くなってきています。
CMS選びについて
CMSの選択は時にプロジェクトの成功・失敗を左右してしまうほど重要な要因となります。冒頭に申し上げた通り、「CMS」と言っても、構築手法から機能まで様々です。必ずしも高価なものや機能の多いものが優れているのではなく、導入の目的に合わせて、それぞれの特性や適性を吟味して最適なものを選ぶ必要があります。
Webサイトを新規構築やリニューアルする際、最初は必ず「要件定義」から行います。現状の問題点や課題、達成したい目標を明確にすることで、必要なツールや手段を選別することが可能になります。目的によって重視するポイントは大きく変わってきます。また、現状と要望を踏まえた上で、本当に必要な機能を絞ったり、やりたいことに優先順位を付けたりすることも不可欠です。更に、新しいツールを導入することは、今までの業務フローに大きな影響を与える可能性も高くなりますので、事前に業務フローの整理や運用体制の整備を行っておくと移行がスムーズになります。
構築工数(プロジェクト期間)や予算はもちろん、サイト規模(管理するドメイン数やページ数)、対応デバイス、管理体制(同時アクセス人数や多言語対応、管理者リテラシー)、セキュリティ(承認フローや権限管理)なども、選別する際に留意するポイントとなります。大事なのは、現時点ではなく、サイトの成長も見据えた将来的視点に立つことです。しかし、構築段階では全てを確実に予想することはなかなか難しいので、不確定な部分も含めて柔軟に対応できる計画を作ると良いでしょう。
既製CMSツールとスクラッチ開発
既製ツールを導入して使うのに対し、既存の製品や雛形などを流用せずに、新規にゼロから開発することを「スクラッチ開発」と呼んでいます。
一般的に、スクラッチ開発は完全オリジナルで構築するので、掛かる工数とコストが高くなりやすいです。しかし、柔軟な機能設定や最適な情報設計が可能となり、無駄な機能がなく、複雑な構成でも思いのまま対応できるのが魅力的です。
ベースに既製CMS(パッケージ商品)を使い、一部だけカスタマイズすることも可能ですが、そのパッケージに精通している開発者でないと、思わぬ技術的難関や不具合が現れる場合も多々あります。また、ベースとなるパッケージがバージョンアップする度に再構築したり、再度学習しなければいけない可能性もあるため、状況によってトータル的にスクラッチのほうはコストパフォーマンスが良かったりすることもあります。
既製品もスクラッチ開発もそれぞれ強みがありますので、状況に応じて判断する必要があります。
商用CMSとオープンソースCMS
CMSツールの中では、企業のサイト構築に利用する商用CMSや、ソースコードを無償で公開し誰でも改良、再配布が行えるオープンソースのものがあります。もちろんそれぞれメリット・デメリットがあることは言うまでもありませんが、参考として代表的なところを以下のようにまとめました。
ここで費用面において明確にしておきたいのは、オープンソースなどの無料CMSツールの「無料」とは、「ライセンス費」が無料なだけということです。構築費や保守費用が発生することを忘れてはいけません。ライセンス費のところでコストを低く抑えられたとしても、運用していく上で必ず管理コストが生じます。外部委託する場合はもちろん、自社対応の場合でも、専門知識の有する担当者を配置する必要があるでしょう。このような社内担当者の育成や担当者変更に伴う引継ぎ作業、マニュアルの作成や更新コストなども考慮すべきものです。たくさんの無料プラグインでサイトに機能追加できるのはオープンソースの魅力ですが、プラグインの信頼性や操作性を判断するにはそれなりの高いリテラシーと検証時間が求められるでしょう。
コストを考える際に、初期費用だけでなく、必ず中長期の運用も視野に入れて総合的に考慮してください。特にオープンソースはバージョンアップもトラブルも自己責任となるので、それなりのリスクが伴うことを認識しなければいけません。
ビジネスで利用するにあたり、コストだけで考えるのはかなり危険なことです。導入目的と照合しながら、限られた予算の中で、開発期間、システムとしての安全性、運用難易度や導入効果などのバランスを見て総合的に判断していきます。
CMSの活用
Webサイトの更新頻度の高いところ(製品情報やニュースリリースなど)に部分的にCMSを入れるという利用方法もありますが、手軽な情報更新ツールとして以外にも、CMSの活用方法が多く提案されています。
Webサイトの重要性が日に日に増していく中、CMSはその日常運営管理の効率を飛躍的に向上させただけでなく、マーケティング機能なども持たせています。顧客を取り巻く環境は昔のシングルチャネルからマルチチャネルへ、更にその後のクロスチャネルから現在のオムニチャネルとまで変化してきています。Webサイトを顧客と企業との大切なタッチポイントとして位置付け、単一に情報を発信するのではなく、ユーザーの利用環境や経験に素早く反応し、最適なコンテンツ(情報の量と質)を最適な形で提供することがWebマーケティングの肝となります。CMSは、様々な接点に分散されている顧客情報とコンテンツを総合的に管理することに活用されています。
ブロック形式によるワンソースでスマートデバイス対応が柔軟に行えるCMS(例:SITE PUBLIS)や、静的CMS(パフォーマンス、SEO、簡単なシステム構成)と動的CMS(リアルタイム性、ユーザー最適情報提供)の良いところ取りのハイブリット型CMS(例:NOREN)や、カスタマー・エクスペリエンス・マネージメント(CXM)を通じて情報のパーソナライズや将来予測までできるCMS(例:HeartCore)など、現在提供されている主要商用CMSツールの機能は実に様々です。しかしそれぞれの特徴を強調しながらも、各メーカーが口を揃えるように提唱しているのは、Webサイトにおける「おもてなし」です。たとえ多様なタッチポイントとチャネル間でも、最適化されたシームレスな体験を提供できるように、CMSの活用範囲が更に拡大されていきそうです。
まとめ
どんなに高機能なCMSでも一つのツールに過ぎません。導入すること自体が目的にならないように、ユーザーへの「おもてなしの心」を忘れずに、導入の必要性、目的について十分議論した上で、自社の課題を最も効率的に解決してくれる構築方法とCMSを選んでいただきたいです。
この記事の著者
マイクロウェーブクリエイティブ バックエンドグループ
CMS、Webアプリケーション、開発・プログラミングに関する情報などエンジニア目線で深く切り込んだ情報を発信します。