オウンドメディアは、単なる「企業認知」のためのツールから、成果創出のためのプラットフォームへと進化しています。適切な戦略設計と運用により、顧客とのエンゲージメント強化を経て、リード獲得、さらには売上向上につなげることが可能です。
このコラムは、これからオウンドメディアの立ち上げを検討している、または既存のメディアをより効果的に活用するためにリニューアルを計画している企業ご担当者の皆様に向けて、オウンドメディアの基礎知識や、運営の新潮流、成功のポイントを分かりやすく解説します。
目次
オウンドメディアとは?
オウンドメディアとは、企業が情報発信のために保有・管理するメディアの総称です。
広義にはコーポレートサイトやECサイトなども含まれますが、デジタルマーケティングの分野では、
主に「ブログ」や「コラム」といったWebメディアを指すことが一般的です。
この位置づけを理解するうえで参考になるのが、米国のPR/マーケティング領域の専門家であるジニ・ディートリッヒ(Gini Dietrich)氏が普及させたメディア戦略「PESOモデル」です。PESOモデルでは、メディアを4つのカテゴリに分類しており、オウンドメディアはその中の企業が自ら管理・運営する「Owned Media」に該当します。
※PESOモデルとは?
PESOモデルは、企業のメディア戦略を4つのメディアタイプに分類する概念で、それぞれの頭文字を取って表現されています。
P:「Paid(ペイド)メディア」 | 広告出稿など、費用を支払って掲載するメディア |
E:「Earned(アーンド)メディア」 | 報道機関や第三者が発信するメディア |
S:「Shared(シェアード)メディア」 | ソーシャルメディア上でシェアされるメディア |
O:「Owned(オウンド)メディア」 | 企業が所有・運営するメディア |
オウンドメディアは、このPESOモデルにおいて企業のマーケティング戦略を支える基盤となるメディアです。
他のメディアタイプと連携を強化することで、効率的な情報発信が可能になります。
企業におけるオウンドメディアの必要性と目的
コーポレートサイトやサービスページが既に存在する中で、オウンドメディアが作られる理由は、
他メディアとの「コンセプトの違い」にあります。
コーポレートサイトやサービスサイトは、それぞれ特定の目的を持ったユーザーが訪れるため、サービスや製品の説明など、顕在化したニーズに応じたコンテンツが中心となりますが、潜在的な顧客にアプローチするには、自社のサービスや製品に縛られず、関連する情報やお悩みなど幅広いニーズに応えることも重要です。
そのため、コンテンツテーマや表現の自由度が高く、自社の提供枠を超えた多様な情報発信が可能なオウンドメディアが必要になるのです。
また、オウンドメディアを運用する目的は、企業によって異なりますが、共通しているのは潜在顧客に情報を発信して興味を引きつけるだけでなく、専門性や役立つ情報を継続的に提供することで、顧客との信頼関係を深め、将来的な購入や導入の際に商品名や企業名を想起してもらうことです。
これらの取り組みを通じて、企業全体の売上向上につなげることが最終的な目標となります。
オウンドメディアが果たす役割
前項をまとめると、オウンドメディアの役割は大きく以下の4つに分類されます。
①潜在顧客へのアプローチとリード獲得
オウンドメディアは、商品やサービスの購入に直結する有益な情報を提供し、新規顧客との接点を増やすことを目的としています。 特に、商品ページやサービスページでは伝えきれないような詳細な情報や補足的な内容を発信することで、潜在顧客の購買意欲を高めます。
②ブランディング強化
業界の最新動向や自社の専門性を積極的に発信することで、業界内での信頼と認知度を向上させ、企業やブランドに対する良いイメージを確立し、競合との差別化を図ります。
③顧客との信頼関係構築
継続的に価値のあるコンテンツを提供することで、既存顧客や見込み顧客との長期的な信頼関係を深めます。
④売上の向上
オウンドメディアは単なる情報発信ツールではなく、潜在顧客との接点を生み出し、ビジネス成果につなげることができる重要なマーケティング基盤です。
良質な記事やコンテンツは、資料ダウンロードや問合せなどのリード獲得につながり、インサイドセールスや営業チームにバトンが渡された後、最終的には購入やサービス導入を通して売上向上を目指します。
オウンドメディアのタイプと種類
オウンドメディアのタイプ
オウンドメディアの運用形式は主に以下の2つのタイプに分類されます。
一体型:コーポレートサイトや公式サイトの一部として、ニュースやコラムを展開する形式。
独立型:企業や組織のサイトとは切り離し、デザインやコンセプトを分けた別サイトとして運用する形式。
現在では、多くの企業がオウンドメディアを競合他社との差別化や顧客とのエンゲージメント向上の手段として活用しています。
オウンドメディアの種類
オウンドメディアは、BtoB・BtoCを問わず、さまざまな業種で活用されています。
そしてその種類は、企業の目的やターゲットによって大きく異なります。
以下にその一部をご紹介します。
企業PR型
求職者をターゲットとしたオウンドメディアなどでは、企業文化や働き方などを発信することで、採用活動を効果的に進めることができます。 例えば、「社内イベントの様子」や「各職種の社員が執筆するリレーコラム」といったコンテンツは、就職を検討する求職者から関心が高いです。
専門情報発信型
医療業界では、ユーザーの悩みや相談に応える形や、注意喚起のためにオウンドメディアを活用するケースがあります。例えば、身体の不調、具体的な症状に対し、原因や対処法などを掲載することで、信頼感を高めながら、お悩みの方に正しい情報を届けることが可能です。美容医療の分野では、最新のマシンや施術の解説、技術に関する注意喚起なども、ニッチで深い情報を求める傾向の高い美容ユーザーから需要があります。
お役立ち情報発信型
主にBtoC領域では、サービスや商品の使い方や利用シーン、レシピのような参考事例など、自社プロダクトに関連するお役立ち情報を発信する事で、購買そのものを促すほか、アップセル・クロスセルにつなげることができます。
ナレッジ共有型
業界に特化した専門知識やナレッジを発信することで、業界内での認知向上と新規顧客・取引先開拓を目的としたオウンドメディアもあります。 具体的には、「業界の最新動向」「顧客の成功事例」といったコンテンツにより、潜在顧客の意思決定を促す効果があり、BtoB業界では、この種類のオウンドメディアを運用する企業が多いです。
業界によって多少似た傾向はありますが、競合との差別化を図り選ばれ続けるために独自性の高いコンテンツを作成し、SNSや公式LINEとの連携など、他メディアを絡め、カスタマージャーニーに沿った効果的な運用がなされている企業・組織が活用に成功しています。
オウンドメディア立ち上げの手順
ここからは、一般的なオウンドメディアの立ち上げの工程をステップで説明します。
1.戦略設計
目的を明確にした上で、ターゲットやペルソナの策定やカスタマージャーニーを作成。
さらに、中長期の目標やKPIを設定し、オウンドメディア全体の戦略を立案します。
2.コンテンツ方針策定
自社サービスに関連性があるテーマや、事業に貢献するキーワードを洗い出し、カニバリ(※カニバリゼーション)が発生しないよう注意し、メディアやコンテンツの方針を策定します。
※カニバリゼーション
同じ検索キーワードに対し、自社の複数のページが競合してしまうこと
3.構築
自社の目的に適合するCMSを導入し、運用方針に沿った管理画面の設計やターゲットニーズを踏まえたデザイン・UI/UXなど、オウンドメディアの構築を行います。
4.運用体制の確立
記事や画像の作成方法、承認・公開のフロー、パフォーマンスのモニタリングや改善方法を定め、運用体制を確立します。
立ち上げ段階の戦略設計が重要
多くのユーザーが集まり、効果的に機能するオウンドメディアを構築するためには、立ち上げ段階の戦略設計が非常に重要です。
単に伝えたいことを一方的に発信するのではなく、自社の目的に対して市場やユーザーの現状を的確に把握し、オウンドメディアの役割を明確にすることが求められます。
また、オウンドメディアを通じてどのように売上成果につなげるのか、サービスや製品ページなどへの導線をどのように設計するかも十分に検討する必要があります。戦略設計が不十分なオウンドメディアは、単なる情報発信の場にとどまり、ビジネス成果につながりにくくなります。そのため、構想段階で明確な方針を定めることが、
オウンドメディア立ち上げ期のポイントです。
オウンドメディアの構築費用
企業のオウンドメディアでは、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を導入して運用するケースが一般的ですので、多くの場合、制作会社に外注されます。
外注する際の構築費用は、以下のように依頼範囲や条件によって大きく異なります。
- 基本的な構築のみ
- ターゲットや競合調査などコンサルティングを含める
- 戦略設計やSEOなどマーケティング支援まで行う
- 運用や改善施策まで実施する
費用相場
一般的な費用相場は、300万~500万円程度が目安ですが、
大規模なオウンドメディアの場合、1000万円以上となるケースもあります。
オウンドメディア運営の最新トレンドとポイント
オウンドメディアの目的を達成するためには、構築して終わりではなく、適切な運用が不可欠です。
近年では、ユーザーの関心が多様化し、コンテンツのパーソナライズ化が更に加速しているため、ターゲットオーディエンスに合わせて細緻化された運用戦略が必要になります。
成功するための主なポイントを以下に整理しました。
①ターゲット設計
オウンドメディアの特性上、顧客がCV(問い合わせや申し込み、購入など)に至るまでの道のりは長いです。見込み顧客に対し、そのステージで必要とする情報を適切なタイミングで提供し、行動変容を促すためには、ターゲットとなる顧客層を明確にし、ペルソナ設計やカスタマージャーニーなどの戦略を立てることが重要です。
近年では、記事コンテンツだけでなく、Instagramや動画プラットフォーム、LINE公式アカウントとの連動など、複数のチャネルを活用した発信が重要視されており、ユーザーの興味を引く工夫が求められています。
②検索流入を増加させるためのSEO施策
ニッチなキーワードで、検索ボリュームが少なくてもCV率が高いケースもありますが、オウンドメディアは幅広いユーザーに閲覧されてこそ成果につながります。
そのため、キーワード戦略やメタ情報の最適化に加え、検索エンジンのアルゴリズムの変化に対応した適切なSEO施策が欠かせません。
特に近年では、GoogleがE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を重視する傾向が強まっており、検索結果で上位表示を狙うには、単なるキーワード最適化だけでなく、ユーザーの検索意図を深く理解し、信頼性の高い情報を提供することが求められています。
③コンテンツ施策
製品・サービスに直結する情報だけでなく、業界トレンドや話題性のある内容を発信することで、幅広い層への認知拡大とブランド信頼性の向上を図ることも重要です。また、どのコンテンツがどのような数値インパクトを持ち、商談や受注につながったのかを把握し、良質なコンテンツを効率的に生み出せるよう、計画的に運用することも求められます。
④ブランドストーリーテリング
現代のオウンドメディアでは、製品やサービスの一方向的な情報提供や宣伝だけではなく、ブランドのヒストリーや価値観を伝えることが求められています。
例えば、創業時や途中の苦悩などのブランドヒストリーや顧客とのエピソードなど、消費者とのつながりを深めるためのエピソードを共有し、企業と消費者との双方向的コミュニケーションを育むことで、長期的な関係性を築くことができます。
⑤生成AIの活用
データベース型のWebサイトをはじめ、Webコンテンツ制作において生成AIの導入が進み、オウンドメディアの運用でも、その活用が広がりつつあります。
ただし、クオリティ面での課題もあり、すべての工程での採用は現時点では難しい側面もあります。そのため、活用の目的や効果を見極め、適切な部分にAIを取り入れることが重要です。
構築を検討する際は、経験豊富なプロに相談!
オウンドメディアを取り巻く環境は日々変化しており、運営を成功させるには、
最新のトレンドを踏まえた戦略設計が欠かせません。
構築を検討する際は、専門知識を持つプロに相談することが、スムーズな立ち上げと成功への近道です。
当社のオウンドメディア構築事例
当社の構築実績を一部をご紹介します。
ホーユー株式会社 様
総合情報サイト LICOLO(リコロ) 構築事例

オウンドメディアの立ち上げから運用まで総合的にサポートします
本コラムでは、オウンドメディアの定義から構築の手順まで詳しく解説しました。
「思うように成果が出ない」「運営につまづいている」といったご相談をいただくことが増えていますが、
当社の提供するオウンドメディア構築サービスではこうしたお悩みを解決し、長期的な成果に導くサポートを提供しております。
新規立ち上げから運用改善まで幅広く対応しておりますので、
ぜひお気軽にご相談ください!
この記事の著者

マイクロウェーブクリエイティブ マーケティンググループ
「戦略」から「施策まで」企業のデジタルマーケティングに直ぐ活かせる、旬な情報をお届けします。